<副院長からのメッセージ>  
母乳栄養のお子さんへ
皮膚の保湿について
赤ちゃんのアレルギーの予防のために
ギュっとハグ  (子育て通信より)
最良の母親とは、まあまあの母親である。
未来を担うこども達の生活を見直してみませんか?!
 パパママ タバコをやめて
ヘルパンギーナ (子育て通信より)
マタニティーブルーズと産後のうつ病  (子育て通信より)
産後のお母さんのためのセルフケア
(マタニティーブルーズを乗り切るコツ)
 (子育て通信より)
保育園 (子育て通信より)
おっぱい 仕事を続けていてもあげたい…(子育て通信より)
キャリアを積みながら充実した子育てを (子育て通信より)
赤ちゃんとゲーム (子育て通信より)
ゲーム製作者の意図を知る
……買い与える前に知っておくべきこと
(子育て通信より)


子育て通信
大阪小児科医会発行の「子育て通信」が新しくなりました。
大阪の小児科医たちからのお母さんへのメッセージです。
病気の時の虎の巻としても使えます。
営利目的ではありませんので、¥1000で情報満載です。

病気別に調べたり、時間のあるときにパラパラとめくってみてください。
子育ての色々なヒントがつまっています。
原医院 副院長の記事も記載されています。
原医院でも購入可能です。

2013年7月
母乳栄養のお子さんへ
赤ちゃんにとって母乳栄養はとても良いものです。お母さんの持っている免疫力を分けてあげて、色々な感染症から守ることが出来たり、アレルギーを起こしにくくしたりすることが出来ます。
そして何より 素敵なスキンシップが出来ます。
お子さんが「もうおっぱいはいらない。」というそぶりを見せるまで続けても大丈夫です。

ただし、現在 さまざまな原因により母乳に不足する栄養素があることが分かっています。
概ね90%以上が母乳の赤ちゃんは以下の栄養素を補充してもらうことが理想です。
ビタミンK2

出血を予防するビタミンです。母乳だけだとビタミンKが不足することがあります。そのため、生後すぐの時期に皮膚やへそ部、胃腸から出血することがあります。まれには生後1~2か月のころ頭蓋内出血を起こす赤ちゃんもいます。これらは「ビタミンK欠乏性出血症」と呼ばれ、そのほとんどがビタミンK2シロップの適切な投与で予防できます。そのため、出生時・生後1週間(産科退院時)・1か月健診時の計3回、ビタミンK2(ケーツー)シロップを飲ませます。完全母乳の赤ちゃんの場合は、現在では生後3か月までは週1回服薬することが勧められています。
日本小児科学会 http://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=134
新生児と乳児のビタミン K 欠乏性出血発症予防に関する提言

2.ビタミンD

母乳には赤ちゃんの成長にとっては大事な様々な成分が入っています。しかし、ビタミンDに関しては粉ミルクに比べて少なく、粉ミルクの1/31/4の量しか含まれていません。母乳のみで育てるとビタミンDが不足しがちになると言われています。

ビタミンDは成長に必要なカルシウムの吸収に必要なビタミンです。ビタミンDは紫外線を浴びることで身体の中で作られます。動物は屋外で生活することで必要量を作っています。しかし、屋内で生活することが増えた現代人は、ビタミンDが不足気味になってしまいます。特に過度な紫外線対策やダイエットなど不適切な食事制限もビタミンD不足の原因となり得ます。

成長期の赤ちゃんには十分量のビタミンDが必要です。乳児期にビタミンDが不足すると骨がもろくなりクル病になったり、感染症にもかかりやすくなります。近年はビタミンDの不足がアレルギー疾患の増加と関係があるのではないかとも言われるようになりました。母乳栄養、日光浴不足、食事制限の3つの要素が重なると、ビタミンDが不足するリスクが上がると考えられます。その結果、乳児のクル病の報告が増え、国際的なコンセンサス勧告では、クル病を予防するために、生後1年間は1400単位(10μg)のビタミンDを補充することが推奨されています。欧米では母乳栄養児にはビタミンDを予防的に投与することが推奨されています。

ビタミンDを多く含む食品には魚介類、卵黄、バター、キノコ類があります。しかし、乳児期にこれらを十分に摂取させることは困難です。

赤ちゃん用のサプリメントとしては、1滴2㎍(80IU)入りと 1滴5µg(200IU)入りの2規格が販売されており、後者は保険薬局を含む医療機関のみ供給されています。原医院にもおいてありますので必要と思われるお子さんには1日に1滴飲ませてあげてください。

対象は母乳育児(特に、完全母乳)で育てられている子どもです。粉ミルクには、ビタミンDも含めて、乳児に必要なビタミンが十分含まれているので、粉ミルクを多く飲んでいる場合は、サプリメントは必要ありません。
原医院がお勧めするサプリメントをご覧ください。
3.鉄分

鉄は地球上の動物が生きていくために必須のミネラルです。鉄は体内の酸素の運搬や貯蓄に強く関わります。人間の体内には3~4gの鉄が存在し何らかのタンパク質と結合して存在しています。鉄の6070%が赤血球中のヘモグロビンに含まれ、次いで多いのがフェリチンです。血液中ではヘモグロビンやトランスフェリン(血液中でトランスフェリンと結合している鉄を血清鉄と呼ぶ)、組織中では筋肉中のミオグロビンやフェリチンと結合しています。フェリチンは主に肝臓などに存在する鉄を貯蔵する役割を担うタンパク質で、フェリチンの低値は貯蔵鉄の枯渇をあらわします。ただし炎症反応のある時にはフェリチンの値は実際より高くなるので注意が必要です。鉄はまた体内におけるエネルギー通貨ともいわれる「アデノシン3リン酸(ATP))の生成に関わる「シトクローム酵素」の構成成分、有害な活性酸素の機能を抑制する抗酸化酵素「カタラーゼ」の構成成分、「ドーパミン」や「セロトニン」などの神経伝達物質を作る補酵素としても用いられます。

よって鉄が不足すると、貧血のみならず、様々な症状をひき起こします。骨・皮膚・粘膜症状(あざ、コラーゲン低下による骨・肌異常、爪・毛髪・舌異常)、消化器症状(嚥下障害、食欲不振、下痢、便秘、氷を好んで食べる)、甲状腺ホルモンの成熟障害、不妊症、白血球・免疫への影響(抵抗力の減少)、不定愁訴:頭痛、イライラ、耳鳴り、肩こり、睡眠の質の低下、疲労、むずむず脚、集中力低下・学習障害・うつ・パニック障害)、などなど。

成長期の乳児は鉄をしっかり取ることが必要で、母乳だけでは足りないことが指摘されています。特に出生体重が小さいお子さんでは、鉄の蓄えが少ないため不足が目立ちます。離乳食が始まればレバーや肉類、卵黄や赤身の魚など鉄分の含まれるものを出来るだけ食べさせてください。

 レバーを食べ過ぎてはいけない時期:妊娠前3か月~妊娠3か月の間にビタミンAを過剰に摂取すると胎児に奇形をもたらす可能性が報告されています。ビタミンAは赤ちゃんの視覚や聴覚、生殖といった機能を維持するのみでなく、成長促進、皮膚、粘膜、遺伝子の圧現に関わる大切な栄養素です。ただし脂溶性のため大量摂取すると尿に排泄されず体内に蓄積してしまいます。ビタミンAはレバー、ウナギ、ホタルイカ、アナゴ、卵黄などに多く含まれています。この時期は適量を心がけてください。

妊婦さんに葉酸

葉酸は、細胞分裂をおこなうDNA合成に必要な栄養素で、レバー ウナギ 緑黄色野菜に多く含まれます。葉酸には先天性障害や流産のリスクを低減したり、妊婦さんの貧血症状を軽くしてくれるなど、さまざまな効果が期待できます。妊娠初期に十分な葉酸を摂ると、先天性奇形である神経管閉鎖障害のリスクを70%ほど減らせるという研究結果がでています。

妊娠中は鉄分不足による鉄欠乏性貧血にくわえて、葉酸不足による巨赤芽球性貧血のリスクもあるため、鉄分と葉酸の摂取は貧血の予防効果も見込まれます。

普段は1240μgの摂取が望ましいですが、妊娠中は2倍の量を摂ることが必要です。

<皮膚の保湿について>

現代の日本人の子ども達の肌は非常に乾燥しています。これは赤ちゃんの頃から石けんやボディーシャンプーで洗いすぎていることが関係していると思われます。

皮膚の潤いは善玉細菌によって作られています。表皮ブドウ球菌に代表される善玉細菌は、皮脂や汗を分解してグリセリンや脂肪酸を作って皮脂膜を形成し、肌を弱酸性に保ち、肌に良い働きをしてくれます。肌の上で活動する細菌の数は1兆個以上。1㎝四方には約20万個と言われるため、顔だけでも約8,000万個の菌が活動していることになります。黄色ブドウ球菌を代表とする悪玉菌は、善玉菌の勢力が衰え、肌がアルカリ性に傾くと繁殖し、炎症、吹き出物など肌に悪さをします。日和見(ひよりみ)菌とは、肌環境によって善玉菌にも悪玉菌にも姿を変える、中立的な菌でニキビの原因になるアクネ菌もこの中に含まれます。

表皮ブドウ球菌は,赤ちゃんのときに周囲の大人からもらい、皮膚に定着して住み続けることになります。免疫寛容と呼ぶ機構が働くので、幼少期からずっと持っている細菌ほど体の一部だと判断して攻撃しなくなります。赤ちゃんの間に必要な細菌を持つことは大切なことです。

皮膚は体を守る最大の防御組織です。グリセリンは水溶性で保水力が高く皮膚を乾燥から守る働きをします。ヒトは細菌と共生することで自分自身を守るように進化してきたわけです。乾燥肌の最大の原因は,皮膚に定着している細菌が減少したことによってグリセリンが作られにくくなったことです。

水で薄めたグリセリンを肌に塗ると、水分を引き寄せて肌をしっとりさせます。さっぱりした感触は湿気の多い夏でも使いやすいです。しかしグリセリンの保湿感は水分ですので、時間が経つと角質層の外へ逃げてしまいます。空気が乾燥する時期は油性の乳液、クリーム等が必要です。

ワセリンは油性で水に溶けず水を弾く性質があるので、ホコリや汗に強いです。一度つけると長時間肌を柔らかく保ちますから、しょっちゅう水に触れる手、常に外気にさらされる顔のお手入れに便利です。しっとりした感触は「油」の強固なベール(保護膜)。寒さと乾燥に強く、冬には頼もしいアイテムです。

<安くて有能な保湿剤>

ベルツ水(グリセリンカリ液)グリセリンの保水性や、水酸化カリウム(アルカリ)の皮膚の角質を軟化させる作用によって、皮膚の亀裂や硬化やカサカサ状態を改善します。特に夏場はスプレーで塗布するのもよいと思います。
*目や傷に入るとしみることがあります。

プロペト白色ワセリンを精製して極力不純物を取り除いた純粋なワセリンです。刺激性の少ないことから、眼軟膏の基剤として開発されました。プロペトには薬剤が一切入っていないので薬効はありませんが、その保湿剤としての能力の高さ、高純度ゆえの安全性により湿疹のひどいところや、切り傷やすり傷を治す時に、皮膚を潤わせて治す湿潤療法としても使えます。そして、プロペトには肌がしっとりすべすべの保湿以外に小じわ、ほうれい線を薄くする効果もあり、唇の保護効果でリップクリームの代わりに使うこともできます。

プラスチベース:流動パラフィン(ベビーオイルの成分)を95%、ゲル化剤としてポリエチレン樹脂を5%含む炭化水素ゲル軟膏基剤です。プロペトと同様 安全性が高く、プロペトより温度による影響が少なく、塗ったときの伸びが良くべたつきも少ないので使用感が良好です。プロペト同様、刺激性が少ないので眼科用の基剤として使われ、口唇保護効果も非常に良好です。プロペトより高価です。


<あかちゃんのアレルギー予防のために>

1)しっかりスキンケアしましょう。

皮膚は外界からの異物の侵入を阻止するための臓器です。がさがさ荒れた皮膚は、様々な異物 (ダニやほこり、花粉や動物のふけ、食べかす等)の侵入を許してしまい、アレルギーを成立さ せてしまいます。荒れてしまった皮膚はしっかり治療し、その後は保湿して維持することが大 切です。

☆ワセリンを毎日たっぷり塗った赤ちゃんにはアトピーやアレルギーの病気が少ないことが注目されています。特に日本人は清潔好きで洗いすぎの傾向にあります。洗って皮脂を取ったのなら保湿が必要です。

☆湿疹がひどいところ:ステロイド軟膏を朝、夜2回は塗布してください。良くなれば1日1回、1日おき、2日おき、週に1回と減らしてください。朝夜2回塗布を7日間続けて良くならない時は再診ください。

☆ステロイドを塗らない場所、塗らない日は,ワセリン(プロペト)を塗布します。

☆掻いてしまった処には、その時に亜鉛華軟膏を叩き込むように塗布して掻き壊さないようにして下さい。

2)皮膚を守ってくれる常在菌を減らさないようにしましょう。

☆洗いすぎないようにしましょう。
皮膚上には常在菌という細菌が住んでいて毒性のある細菌を増やさないようにしています。良い常在菌を取りすぎると皮膚の防御力が落ちてアレルギーを起こしやすくなります。基本的に石鹸が必要なのは陰部、指の間、頭くらいの汚れのある部分だけです。刺激の少ない固形石鹸を泡立てて泡のみで手でそっと洗ってください。

☆両親とのスキンシップ!成人の健康な皮膚は多くの常在菌に守られています。スキンシップをすることで、その良い細菌を植え付けることになります。

☆できるだけ外で遊びましょう。多くの細菌と小さい頃から接触している方がアレルギーになりにくいと言われます。怖い病気に対するワクチンをしっかり接種してから,外で楽しく遊ばせるようにして下さい。

3)皮膚への異物(特に食物)の侵入を防ぎましょう。

☆食事をする部屋と赤ちゃんの寝室は分けてください。

赤ちゃんの皮膚は薄くデリケートです。特に荒れている処に卵や小麦などの食物がつくと、目に見えないくらいの分子が肌から入ってしまいます。侵入した異物に対して体は抗体を作ってしまい、食物アレルギーが形成されてしまいます。
料理を作ったり食べたりする場所と,赤ちゃんの寝室は分けておいてください。顔面や首が荒れているときは食事前にワセリン等を塗って皮膚につかないようにして食べさせてください。

4)赤ちゃんの腸内細菌を増やしましょう。腸管は栄養物を消化して吸収しますが、細菌や異物の侵入を防ぐための複雑な機能を持っています。
それを助けているのが腸内細菌です。

☆赤ちゃんは、産道から出る時にママの腸内細菌をもらいます。その後もおっぱいを吸うとき、キスしたりなめたりの度に細菌をもらいます。健康な人が持っている良い細菌をもらうことが大切なのです。食器洗い機は清潔にしすぎるため、食器洗い機を使う家庭の方がアレルギーのある子どもが多いと言われています。

☆抗生物質の使い過ぎに注意しましょう。ウイルスの感染による風邪,中耳炎,鼻副鼻腔炎等では抗生物質は不要です。抗生物質は大切な正常な細菌にも影響します。どうしても必要な場合以外は、抗生物質を使いたくありません。

抗生物質が必要になる病原性細菌の感染を防ぐためにも、規定通りのワクチン接種が重要です。

5)様々な離乳食を食べましょう。

アレルギーの原因になりやすい食べ物は、制限すると逆にアレルギーの原因になりやすくなることが分かってきました。血液検査で陽性の場合にもほとんどは食べることができます。
腸管は免疫機能が非常に発達しており、病原性のある細菌を見分け排除し、栄養素になる食品はアレルギー反応を起こさなくなるように調節(免疫寛容)することが出来ます。
皮膚で感作される前に食べることでアレルギーが予防できると言われるようになってきました。


ギュっとハグ

 大好きな人にギュってハグしてもらうのって嬉しいですね。
いっぱいいっぱいハグしてあげてください。
大好きな人とのふれあいで幸せホルモンが出て、前頭葉の働きが良くなって、
子どもは生きるスキルを成長させます。

 小さいときに熱が出るとおでこに手を当ててもらったことを覚えていますか?
お腹痛や怪我の時に「痛いの痛いの飛んでけ
~!」と
さすってもらったあの安心感も覚えていますよね。
あったかいお母さんの手は痛みを忘れさせてくれました。
もちろんお父さん、おばあちゃん、おじいちゃん達の手も…

 アトピー性皮膚炎で痒みの強い赤ちゃんを抱いた、
あるお母さんが「私にアレルギーがあるばっかりに、
この子にこんなにつらい思いをさせてしまう…。」と涙されました。

でも、ちょっと待って下さい。考え方を変えましょう。
赤ちゃんはとってもニコニコ幸せそうです。
痒い湿疹はつらいけど、毎日何回ものスキンケアで軟膏を塗ってさすって
抱きしめてもらって、とても幸せそうです。
「こんなに気持ちいい時間をお母さんから一杯もらえて幸せな子!」
って思って笑顔でケアしてあげてください。
延々と続く面倒な処置ですが、赤ちゃんとの大切な触れ合いの時間と理解してください。

 おっぱいを飲んでいる赤ちゃんをお母さんが抱っこして、
頬ずりしながらハグします。
可愛い大切な赤ちゃんだから、そのウンチでさえもお母さんに
とっては気持ち悪くありません。ウンチは赤ちゃんの体調を表すシグナルです。
毎日オムツを替えながら、さすってあげて、赤ちゃん体操 1,2,3!!

お母さんも赤ちゃんもいい気持ちになります。
実はこうした触れ合いが赤ちゃんを守っているのです。
お母さんは触れ合うことで赤ちゃんが感染したウイルスやばい菌をもらいます。
そしてお母さんの体の中でそれに対する免疫を作り、
おっぱいを通してその免疫を赤ちゃんにあげているのです。

お母さんに触ってもらう感覚、
目から見えるお母さんの笑顔、耳から聞こえるやさしい子守唄、
お母さんの甘い香り、自分だけのお母さんのおっぱいの味、
五感を通して赤ちゃんはお母さんを求めます。

ギュッとハグして赤ちゃんに応えてあげてください。
携帯電話は横において赤ちゃんの目を見つめながら 
しっかり抱きしめてあげて下さい。

          
                     (原統子 大阪小児科医会 子育て通信より)

最良の母親とは、
まあまあの母親である。

ドナルド・ウィニコット

ドナルド・ウィニコットは、子育てに関して数々の名言を残している著名なイギリスの小児精神科医。

本当に大切な子育て法その1:抱っこをする

本当に大切な子育て法その2
育児書を読みすぎず、自分の感覚を頼りに接する

本当に大切な子育て法その3:時には失敗してもいい。


未来を担うこども達の生活を見直てみませんか?!

規則正しい生活と、栄養のバランスのとれた食事、
満ち足りた人間関係が子どもを育てます。

当たり前だと思われていた一日3回の家族での食事、語らい、
友人と戸外で走り回り笑いあう楽しさ

日本では今そんな大切な物を失った子どもたちがいます。
世界中で一番遅くまで外をうろつく、睡眠時間の不足した子どもたちがいます。
一生懸命になることをかっこ悪いという日本の若い人の風潮
何かおかしいと思いませんか?

 「人間の子どもを“メディア漬け”にして育てると、
心や体、コミュニケーション能力の発達にどんな歪みや遅れが現れるのか。
親子の愛着形成にどのような変化が起こるのか…
。」
日本の子どもたちは今、人類史上かってなかった、
そんな「人体実験」の真っただ中にいます。
・・・・・・・・『「メディア漬け」で壊れる子どもたち』 より。

 「幸福は、働くことと規律正しさから生まれると私は思います。」
テニスのトップ選手、ラファエル・ナダル(スペイン)のコーチでもある伯父 トニーの言葉です。
今の私にはとても深い意味があると思われます。 


 明るくなったら起きて暗くなったら寝るという生活リズムが
いかに体に重要かを知ってください。
体に必要なものをおなかいっぱい食べて肥満と無関係な健康な体を作ってください。
人間の体の細胞は日々食べた物によって作りかえられているのです。
甘いものや油ものばかりを食べてダイエットすることの危険性を知ってください。
若い女性に多くみられる貧血、痩せているのに体脂肪率の高い隠れ肥満。。。。。

今の日本人に不足している食品群          
  1群:筋肉や骨等を作りエネルギー源にもなる蛋白質(魚・肉・卵・大豆食品) 
  2群:骨・歯を作り、体の各機能を調節する
     カルシウムを多く含む乳製品・海草・小魚

  3群:皮膚や粘膜を保護し、体の各機能を調節する緑黄色野菜
  4群:体の各機能を調節する淡色野菜や果物


早寝  早起き  朝ごはん    朝ウンチ

低下するとイライラ感や攻撃性が増加してしまう 昼のセロトニン
眠りの質を高める 夜のメラトニンを高める8か条です。

      毎朝 しっかり朝日を浴びましょう     
      ごはんは しっかりよく噛んで 、特に朝はきちんと食べましょう
      昼間は たっぷり運動をしてください
      夜ふかしになるなら 昼寝は 早めに切り上げましょう
      テレビ ビデオはけじめが必要、時間を決めてください
      寝るまでの入眠儀式を大切にしましょう(少し暗くして絵本を読んであげる等)
      暗いお部屋で ゆっくりおやすみ
      悪循環(夜ふかし⇒朝寝坊⇒慢性の時差ぼけ⇒眠れない)を断ち切るために
   早起きしてください

ノーテレビ  ノーゲーム デー

電子映像メディア接触の長時間化で蝕まれるこどもの体

    足がおかしい⇒歩行歩数の減少で長く歩けない子
            バランスを崩してすぐに転ぶ子 
            転ぶときに顔から落ちてしまう子
            泳ぐように走る子・・・
       運動能力
低下の一途をたどっています
    背筋力指数の低下⇒大人になったときに赤ちゃんを長く抱けるかな??
    自律神経が鍛えられない⇒血圧調整不良のこどもたち
                    体温調節不良のこどもたちが増えています
    脳の異変?⇒キレるこどもの増加
           
ADHD(注意欠陥・多動障害)のこどもの増加との関係は・・・?!  
   テレビゲームをしている時、
   脳の視覚野と手を動かす運動野は活性化しています
   でも人間らしい「高度な精神活動をつかさどる」前頭葉の一部:
   前頭前野は働いていないのです!!!

    視力の衰え、特に立体視力が発達しません
    嗅覚・触覚も発達しません
    学力の衰え⇒諸外国に比べ確実に落ちてきているという報告が相次いでいます
    コミュニケーション能力が育ちません
    バーチャル(仮想現実)体験先行の危険性!
   「一度死んだ命がよみがえることがあると思う」と答えた小学校6年生が
   日本では85%に達したというのです・・・・!

*乳幼児期からビデオを一人で長時間視聴していた子に共通する行動特徴

① 友達関係が持てない
② 遊びが限られている
③ 表情が乏しい
④ 気持が通わない
⑤  物を何かに見立てて、想像して遊べない
⑥  自分から話しかけようとしない
⑦  ほかの子どもが近寄ると避ける
⑧ 視線が合わない

“メディア漬け”状態の子どもたちは、
自分の感情や欲望を制御したり相手を思いやったりする脳の働きを担う
大脳の「前頭前野」の発達に問題があることが明らかになっています。
言葉を使わずに幼児期には噛みつく、引っ掻く、体当たり、奇声を上げる等で表現し、
年齢が上がるにつれ、殴る、蹴るそして様々な暴力、犯罪などで
自分の感情や思いを表現するようになることさえあるのです。

    

元気に挨拶

*コミュニケーション能力をつける基本です!!

子どもが“人間”として育っていくためには、
体を使い、言葉を使い、集団の中で多様な人間関係を体験することが必要です。
群れ遊びの中で、筋肉や立体視力、自律神経などの身体的発達とともに
社会的な発達、文化的な発達を遂げて“人間”になっていきます。

 日本は今、子供たちの環境を 真剣に見直す時が来ていると思います。

参考図書 「メディア漬け」で壊れる子どもたち
特定非営利活動法人「子どもとメディア」

パパママ タバコをやめて
札幌市が「健康さっぽろ21」の取組みの一つとして、
禁煙動画「パパ、ママ、たばこをやめて!」を作成し、
市のホームページ上に公開しています。
http://www.kenko-sapporo21.jp/main.html

(以下は直接、動画が、Real Playerで開きます)
http://www.kenko-sapporo21.jp/dai_2/kinen_movie.html

動画がFlashで作成されているため、
Flash Playerがインストールされている環境でないと、
動画を見ることができません。

以下のサイトからダウンロードして下さい。
http://www.adobe.com/jp/products/flashplayer/



ヘルパンギーナ

ヘルパンギーナは 乳幼児間で流行しやすい夏かぜの一種です。突然の発熱に続いてのどが赤くなり、のどの奥に小水疱が多発します。3840度の高熱が23日続く事が多く、のどの痛みが強いので、飲んだり食べたりが辛くなります。水分が充分に摂れないと脱水症になることもあります。発熱時に熱性けいれんを伴ったり、ごくまれですが無菌性髄膜炎や急性心筋炎の合併もあります。主にエンテロウイルス属(特にA群・B群コクサッキーウイルス、エコーウイルス)というウイルスが原因です。感染経路は吐物や糞便を始末した手等の口や鼻への接触や飛沫感染で、潜伏期は24日です。

特効薬はありません。熱や痛みに対して、鎮痛解熱剤を使ったり、うがい薬を工夫したり対症療法です。熱さましは使いすぎず、熱がっていれば冷やし涼しくしてあげましょう。お茶やイオン飲料等の水分を充分摂らせましょう。痛みが強いのですっぱい物、辛い物、硬い物は飲み込みにくいです。食事は食欲が出るまで無理をせず、少量ずつ噛まずに飲み込める物(さましたおじや、豆腐、ゼリー、プリン、アイスクリーム、ポタージュスープ等)をあげて下さい。

全く水分が摂れない時、高熱が4,5日以上続くとき、元気がなくぐったりしている時にはもう一度診察を受けて下さい。

流行阻止のために登園登校停止扱いとなる伝染病の中にはっきりとは含まれていませんが、流行の程度により出席停止扱いをとることがあり得ます。ウイルスは長期に便から排泄されるので出席停止による流行阻止効果は期待できません。患者さん本人の状態によって登園登校の可否を判断すべきでしょう。流行時のうがいや手洗い励行が大切です。

夏かぜには ヘルパンギーナや手足口病、その他消化器症状や発疹のできるもの等がありますが、最近の温暖化と家庭での冷暖房の充実により感染症にも季節感がなくなってきているように思います。                     

ちなみに熱が自然に下がることを下熱といい、薬等で下げることを解熱というそうです。環境や気温があついのが暑い、熱で暑いのが熱い。日本語の妙ですね。                         

(原統子 大阪小児科医会 子育て通信より)
マタニティーブルーズと産後のうつ病

 待ち望んでいた出産で経過が順調でもマタニティーブルーズや産後うつ病になる事があります。Aさんは出産後数日で、ちょっとしたことで怒りっぽく気分が不安定になり、夫の何気ない言葉で涙がこぼれる事がありましたが、一過性で回復しました(マタニティーブルーズ)。そして、産後1ヶ月、「授乳や夜泣きで眠れない」「食欲がない」「料理を作る気がしない」「子どもの泣き声が耳障り」といった訴えが出るようになりました。ご主人が手伝おうとすると「やり方が違うでしょ!なんでそんなこともできないの?」となじることもあり、笑う事が減っていきました。(産後うつ病)

妊娠出産という生物学的に大きな出来事は女性の体と精神に大きな変化を与えます。妊娠中は女性ホルモンが多く産生され、妊娠の維持や安全な出産、水分と電解質のバランス、ストレスに対する準備などに有利に働きます。さらに脳内の神経伝達物質に作用し、神経保護作用、認知機能障害に対する改善効果などを示します。それらが出産後急に減少する事が発症に影響すると考えられます。又、心理社会的には母親としての役割に直面し、働きながら子育てする女性では母親と勤労者としての葛藤に苦しむ事もあります。

 マタニティーブルーズは、出産直後の数日間に発症する気分の低下や不安、涙もろさ、不眠、情緒や認知の障害などで、一過性でほとんどが自然に軽快します。一般的に特別な予防や治療は必要ありません。まれに産後うつ病に移行する事があるので経過観察は必要です。

それに対し、産後うつ病は、産後数週から数ヶ月で始まる事が多く、一般的なうつ病とほぼ同じ症状ですが、新生児の病気や母乳についての過剰な訴え、十分な育児が出来ない事への自責感が目立ちます。軽症や中等症でも進行したり、子どもへの愛着形成が不十分になり、養育環境が悪化し子どもの発達に影響する事もあります。物の見方が否定的になり「私は駄目な親だ…」と自信を失い、「私ばかりが大変…任せられない」と家族の協力を評価出来ず、その受け止め方が態度に表れて、さらにサポートが得られにくくなるという悪循環に陥りがちです。産後の死亡原因の20%が自殺であり、初産女性の希死・自傷念慮は5.415%というデーターもあります。お母さんの精神状態が良い事は赤ちゃんの発達にも必須です。必要なら一時授乳を中断してもお母さんの薬剤治療を優先する事があります。また甲状腺機能低下症や貧血による抑うつ状態にも注意が必要です。

 (原統子 大阪小児科医会 子育て通信より)

産後のお母さんのためのセルフケア
(マタニティーブルーズを乗り切るコツ)

あなたの時間は、赤ちゃんとすごすためのもの。大切なわが子を胸に抱くのをどれ ほど待ち続けていたか思い出してね。この愛おしい時間はあっという間に過ぎ去ってしまうから。
休養が一番。赤ちゃんが寝たら必ずあなたも寝るか休む事。くれぐれも飛び起きて雑用をしないで。家事には優先順位をつけましょう。
頑張りすぎない事。お友達や親類の訪問は、時間も人数も控えめにして、完璧なおもてなしは必要なし。あなたが部屋着なら相手も長居しないはず。
適度の運動はおすすめです。疲れや痛みはネガティブな感情を増幅させてしまうから、無理をしないようにしましょう。
ちゃんと食べる事。栄養があり簡単に食べられる健康的なおやつをキープして。
水分を摂りましょう。身体を元に戻し、授乳するために沢山の水分が必要です。カフェインや炭酸は控え、お酒は控えるか、たしなむ程度にして下さい。
家事・炊事・育児を抱え込まず、頼める人があれば甘えてね。お友達の「出来る事があったらなんでも言って」という申し出には応じましょう。
パートナーが家事やお世話を手伝ってくれたら感謝の気持ちを伝えてね。少しでも感謝の気持ちを伝える事がとても大きな力になります。
どうぞ、自分を大切に。お化粧や髪の手入れをしましょう。赤ちゃんと2人で入浴を楽しんでね。軽めの本を読むのもいいかも。
赤ちゃんと散歩に出かけて新鮮な空気を思いっきり吸い込みましょう。子連れで参加できる、新米ママ達のグループ、母と子の体操教室、出産場所の同窓会、子どもを預けあえる仲間達などを見つけましょう。新しいグループを始めてもOK。赤ちゃんを可愛く着飾らせ、公園に連れて行ってアヒルに餌をあげたり、楽しい事を一緒にしましょう。
少しの時間で沢山休めるようリラックス方法や瞑想法を学んでみて下さい。
産後に気持ちが沈むのは、多くの人が経験する事です。でもそんな日が続いて打ちのめされたような気持ちになったら、ためらわずに主治医や家族に相談して下さい。我慢せずに必要な助けを受ける事がとても大切です。
色々な助言をすべてうのみにせず、半分は聞き流すといいかもしれません。赤ちゃんにとって何がベストか一番知っているあなたの直感に従って下さい。

“Tips for Handling the Baby Blues”(小曽根、高橋、田中、湧谷翻訳)を改変)

 (原統子 大阪小児科医会 子育て通信より)

保育園

近年、子ども達は多くの時間を保育園で過ごすようになってきました。集団生活の中で、お友達との楽しい触れ合いを知り、おもちゃの取り合いに始まる人間関係のあつれきの洗礼を受け、社会性を学び成長していきます。先生の真似をしたりお友達を思いやることを覚えたり、家庭で経験する以上の成長を示すこともあります。ただし、早寝!早起き!朝ごはん!+朝うんち!基本的な生活リズムの形成や躾は家庭でするものだと心得てくださいね。

集団生活という新しい環境に入るとどうしても病気をもらいます。最初の1年半位は次々と熱を出したり咳や下痢をしたり、職場への呼出し電話も多々あります。お母さんからもらった感染症への免疫が減ると、子どもは風邪をひきます。次々と病気をもらってしまうことは当たり前の事ですが、重症化させないことが大切です。自然にかかると怖い多くの病気にかからないようにするために予防接種があります。

入所前に受けられる予防接種は出来る限り受けて下さいね。また規則正しい生活をして、栄養のバランスのとれた食事をしっかり噛んで食べる。そういった基本的な事が病気を重症化させません。

子どもは病気をするものです。発熱してしまったときに見て下さるおじいちゃん、おばちゃん、お友達などが見つかるといいですね。私はベビーシッターさんの派遣サービスも利用しました。近くに病児保育があると本当に助かります。

但し病気のしんどい(つらい)時に大好きな家族に看病してもらえる幸せも経験させてあげて欲しいと思います。「痛いの痛いのとんでけ~~」とさすってもらった手の気持ちよさ、「お熱あるかなぁ」と触ってもらうお母さんの手やおでこでごっつんした時の嬉しさ、「大丈夫かなぁ」って覗きこんでくれる家族の優しい目、しんどい時に作ってもらったおかゆの美味しさ…。素敵な思い出作りにかかせません。一人で我慢しながら保育園に行っている子へのご褒美です。子供が病気の時には親が看病できる社会になって欲しいと思います。

素晴らしい経験をいっぱいして、保育園を卒業してくださいね。

 (原統子 大阪小児科医会 子育て通信より)

おっぱい 仕事を続けていてもあげたい…

 私が若かった頃、私の娘達は僅か1か月半から保育園に預けられることになりました。預けた時に、悲しそうに泣かれるとたまりません。仕事を始めてもおっぱいが張ってきて嫌でも我が子の事を思い出します。そして仕事の合間に搾乳・冷凍して保育園に持って行きました。搾乳したおっぱいを冷凍するためのグッズも進化しているようですね。

可能であれば是非おっぱいをあげて下さい。栄養バランスが良く、病気にかかりにくくし、アレルギー疾患を起こしにくくする免疫力を母乳は含んでいます。勿論、お母さんの栄養状態が良い事が前提です。色々な理由で母乳を飲ませられない方もあります。また、母乳が不足してしまうこともあります。そんな時は素晴らしいミルクがあります。不足時はミルクを足してくださいね。

免疫力の未熟な赤ちゃんは次々に病気をします。その時にお母さんは一生懸命看病し抱きしめます。鼻が苦しそうだからと鼻水を口で吸ってあげることもあるかもしれません。どんなウンチをしているかみて綺麗に拭いてあげることも大切です。そのお世話をする過程で、お母さんは赤ちゃんがもらってしまったウイルスや細菌をもらっているのです。そして免疫力のあるお母さんの体の中で抗体を作りおっぱいにしてあげています。病気の時ほど一緒にいて抱きしめてあげて欲しいと思います。

人間の赤ちゃんは脳が発達し大きくなったため消化機能がまだ未熟な時期に生まれることになりました。だから他の動物と違い長い期間離乳食が必要です。その時期に異種(卵は鳥類の赤ちゃんの栄養素、牛乳は同じ哺乳類ですが異種ですよね)の蛋白を与え過ぎると消化しきれません。栄養過多の日本では、個人差はありますが今までは少し与える時期が早すぎたのかもしれません。

そしておっぱいをあげることは何より大切な親子の触れ合いが自然に出来ます。親の顔を見て笑ってくれる子供の顔に思わず笑い返して頬ずりし、声をかけ抱きしめおっぱいをあげる。赤ちゃんはお母さんの笑顔をを見つめながら、自分だけのおっぱいの味を知り、その匂いやお母さんの髪の香りを嗅ぎ、お母さんの優しい声を聴き、温かく揺すってくれる手を感じます。視覚も聴覚も触覚も嗅覚も味覚も!!五感全てがこの触れ合いから発達するのです。もちろんお父さん、おじいちゃん、おばあちゃんとの触れ合いも大切です。脳の神経回路は3歳までに爆発的に増加します。使う回路は強化され、使わない回路は消えていくのです。十分に刺激を受けることが出来ないとその感覚・能力は上手く伸びてくれません。

テレビやビデオに子育てさせないでくださいね。おっぱいあげながらの携帯も…。

(原統子 大阪小児科医会 子育て通信より)

キャリアを積みながら充実した子育てを

 キャリアを積んでいる途上の女性にとって働きながら子どもを育てることは大変な事です。その大変さ故に、子どもを持つことをためらう女性が増えています。また作ろうと思った時には年齢が上がり、なかなか子宝に恵まれないという問題も浮上しています。

 日本や韓国では未だに女性の年齢別社会進出を示すグラフがM字型をとり、子育てしながら仕事を続けることの難しさを示しています。海外では時間外に仕事を持ち込む人は能力がないと残業は推奨されません。日本では「身を粉にして働く」事が美徳とされ、職場に遅くまで残り、休日も働く人が偉いという考え方が今もあります。働きながら古典的な良いお母さんを目指すことは大変な事です。キャリアを維持しながら子育てをするには、まずお父さんや家族の理解と協力が必要です。育児のみで無く、お母さんの良き理解者としてのお父さんの存在がとても重要です。そして合理的に仕事をこなせば、たとえシングルであっても働きながら育児をすることが普通で、子供が病気の時は父親であれ休暇を取れるような成熟した社会になることを祈ります。

子どもは11秒成長していきます。仕事をしている間はその成長に付き添えない悲しみがあります。でも、夕方からは濃密で楽しい親子の時間です。淋しい思いをさせているだろうと息せき切ってお迎えに行ってみたら先生に抱かれてとっても幸せそう!!ちょっとがっかりなんて事もあるかもしれません。でも一緒にいたくてもいられなかったという思いが、親子の関係を余計に深く結びつけてくれるのではないでしょうか。帰宅後は母親にとって夕食の準備、掃除洗濯、明日の準備ととんでもなく忙しい時です。でも短くてもいいから1対1の充実した時間にしてあげて下さい。10分か15分だけでも、目と目を合わせてきゃっきゃと笑わせて下さい。首が座れば筋トレやと思ってひたすらおんぶも素敵です。少し大きくなると園での話をしてくれながら料理や洗濯などの家事も手伝ってくれるでしょう。しんどいけれど子どもを授かって本当に良かったと思う幸せな時ですね。

 キャリアを積んで一生懸命生きているあなたにこそ、この子育ての素晴らしさを経験して欲しいと思います。

 (原統子 大阪小児科医会 子育て通信より)

  赤ちゃんとゲーム

電子ゲームの対象層は広がり、アイフォンに触ったり振ったりすることで画面が変化する、ベビーアプリがついに登場しました。電子メディアが生活に欠かせなくなった世代が親になっています。テレビやDVDを見ながら授乳するお母さんが77%、ケータイメールを打ちながら授乳するお母さんが40%を超えるという報告があります。赤ちゃんはお母さんに抱きしめられお母さんの笑顔を見ながらおっぱいを飲み、五感をすべて使って愛着形成し発達していきます。その関わりで赤ちゃんは守られていることを感じ、生きていく自信をつけていきます。さらに人の目をみつめ、表情を読み取り、言葉の調子を感じてコミュニケーション力を培っていきます。乳児期の脳の神経回路を形成するその大切な時期に赤ちゃんからのアイコンタクトを拒否し、更には電子メディアに子育てをさせたらいったいどうなるのでしょうか…。

現実世界の認識過程にある乳幼児は、周りの環境、物や人からの応答から実際の物理を獲得していきます。たとえば立体視です。実際の風景や人物を見るときには目の筋肉を収縮させて近く遠くに焦点を合わせ、右と左の目の見え方の差で遠近感を学びます。ゲームでは立体に見えるよう平面上の映像を工夫している訳ですから目は近くに焦点を合わせたままです。又、ゲームはTVビデオと異なり操作に対して応答があります。自分で直接的に行動・応答が出来ますが、その応答は仮想世界でのもので現実世界の物理とは異なります。発達途上の脳への影響は計り知れません。

1~2歳児は自分で歩き出し、親の真似を始める可愛い時です。でも自分中心の世界に生きている年齢なので、親にとってはダダコネに手を焼く時期でもあります。そんな時、電子メディアは実に便利なベビーシッターになり得ます。そこに早期教育ビデオ、育児ビデオの氾濫。暴力的な番組は見せないが、教育的なソフトなら構わないとついつい利用してしまう…。

メディアは非常に魅力的なツールです。それを上手く使いこなすことは現在の社会生活の中で必要不可欠です。しかし、未発達な子どもへのメディアの影響は、成熟した脳への影響とは根本的に異なります。人間としての本来あるべき成長を抑制してしまう可能性があるのです。最低限、2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えたいと思います。授乳中、食事中のテレビ・ビデオは消し会話を楽しみましょう。保護者と子どもでメディアを上手に利用するルールを作ってください。全てのメディア接触時間を制限し、子ども部屋にはテレビ、ビデオ、パソコンを置かないようにしましょう。そしてゲームの開始年齢は「現実」と「空想」がはっきりと区別されてくる時期、つまり8歳~10歳以降が望ましいと思われます。

 (原統子 大阪小児科医会 子育て通信より)

ゲーム製作者の意図を知る
……買い与える前に知っておくべきこと

ゲーム製作者は、いかに「やめられない」ゲームを作るかを考えます。寝る間も惜しんでゲーム漬けになり、はまってやめられなくなれば成功なのです。 

まず操作性が良い事、直感的に操作でき、画面が適切な応答をし、効果音・BGMが心理状態を増幅します。戦い・苦難と安息が交互に来て、数十秒~数分に1回程度の頻度で繰り返されます。課題をクリアすると印象的な映像や音楽を楽しめ、新しい展開を体験出来るという報酬が与えられます。人は難易度が中程度の課題に最も高い動機づけを持つとされます。操作は容易で、内容は複雑、感情移入しやすい世界観があり、謎解きなど続きを見たくなる物語性があると興奮を持続させることが出来ます。更に、自分の分身(アバター、キャラクター等)が経験により成長し、苦楽を共にする仲間ができ、仲間も一緒に成長するというロールプレイングゲームでは、ただやめられないだけではなく、ゲームの中に実社会とは異なる世界を発見しそこに住み着くようになります。その仮想空間には何百万人もの人がネットで繋がっており、様々な出来事がプレーヤーのゲーム進行に関わりなく起きます。その中で色々な行動をし、経験を積みます。最近の技術の進歩で映像は非常に現実的となり、内容は日々改良され、人を引き付け離さなくなるサービスが次々提供され依存性はより強くなっています。ネット上の世界のほうが充実していると感じるようになる事はたやすいことです。オンラインゲームにはまるとは、魅力的な異世界に住みつき生活していると思い込む事に他なりません。引き込まれてしまうと実社会から時間的にも精神的にも引き離されてしまう危うさを持っています。

最近では乳児期からゲームをはじめる子が増え、長時間化しています。子ども達は携帯ゲーム機を持って公園に集まり、無線やネットは繋がっていても孤立して遊ぶ様になりました。又、オンライン化される事で不特定多数の、時には悪意を持った他者からの影響を受け易いのです。

もともと社会に不適応傾向のある子どもがネットゲームにはまり易いことは事実ですが、依存しやすい人のみならず、普通の人でもゲームにはまり易い様に作られています。如何にやめにくく作られているかを知ってください。

 (原統子 大阪小児科医会 子育て通信より)